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認知症と相続


1. 本人の介護や認知症に備える場合

 相続税の増税により、相続に不安を抱える人が増えています。しかし、超高齢
 社会では、相続時だけでなく、病気などにより判断能力が低下するリスクにも
 備えなければなりません。特に心配されているのが認知症です。認知症や脳梗
 塞などで本人の判断能力が低下すると、資産は凍結されてしまい、相続対策も
 着手しにくくなります。この対策として知られているのが、任意後見制度です。
 任意後見制度は、本人が元気な内に財産を管理する後見人を選定することがで
 きる制度ですが、実際に機能するのは判断能力が低下してからです。財産は裁
 判所の監督下に置かれ、原則は財産保全が求められますので、現実的には活用
 しづらい面もあると指摘されています。

そこで、最近注目されているのが、「家族信託」という手法です。家族信託の場合は、信託契約をした時点で受託者による資産の管理・運用が始まりますので、資産の管理や運用状況を見届けることができるのがメリットの一つです。
自分が元気な内に、資産が承継できるという安心感があるようです。


    




2. 相続人に認知症の方がいる場合の遺産分割協議

 被相続人はご高齢なケースが一般的ですので、被相続人だけでなく相続人もご
 高齢なことが大変多いです。ご高齢な方がいる場合の遺産分割協議の問題点と
 して、相続人の中のひとりが認知症が発症している場合です。

 単純に認知症だからといって遺産分割をすることができないとは一概に言えま
 せんが、自分の意思を伝えたり自分の状況を理解して物事を判断できない場合
 には、意思能力が欠如していると考えられ遺産分割協議に参加することができ
 ません。
 したがって、一般的に認知症等の方がいる場合の遺産分割協議としては、その
 相続人に「成年後見人」という財産を管理してくれる人をつけることになりま
 す。


 ⇒遺産分割協議をするためには意思能力が必要であって、意思能力がない方が
  した遺産分割協議は無効となってしまうからです。認知症に限らず、知的障害
  や精神障害も同様の趣旨から意思能力がない場合には遺産分割協議に参加でき
  ないものと考えられます。この成年後見人をつけるにあたっては、要件があり
  手続きに時間がかかるため分割協議が進まないだけでなく、また成年後見人と
  なった人は遺産分割協議後もそのままその相続人の財産管理等を継続的に行っ
  ていかなければならず、(専門家に依頼しない場合)負担になるケースもあり
  ます。


これを避けるための効果的な方法の一つとして「遺言書」を作成されることをお勧めします。専門家指導のもと、不備のない遺言書を残しておけば、遺言書通りに相続されることが期待できるため、遺産は共有状態とはならず、遺言書に従って分配されるため遺産分割協議をする必要がないのです。


そして最近注目されつつある方法として、前記の「家族信託」をここでも使うことができます。 遺言書を遺す場合、遺言書作成の厳格な方式に従う必要があります。このことが遺言書作成の面倒くささにつながっています。
信託であれば委託者と受託者との契約で行うこととなりますので厳格な方式に従うわけではありません。そして、信託契約にに信託財産の帰属を定めることによって、遺言と同じ効果を発揮させる
ことができます。


    



      

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